バレンタインデーを日本に定着させた、最大の功労者とは?

今から約60年ほど前に日本に初めて紹介されたバレンタインデー。発祥の地であるヨーロッパやアメリカでは「愛する者同士が愛を確かめ合う日」とされているのに対し、どういうわけかこの日本では「女性から男性に愛を告白する日」とされています。この日本版バレンタインデーの大胆なコンセプトが日本で受け入れられた背景にあるものは「お菓子メーカー陰謀説」だけなのでしょうか?

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「ファラ・フォーセット巻き」と欧米文化へのあこがれ

バレンタインデーが、本格的に日本に定着したのは1970年代から1980年代とされています。高度成長期を経て自信を取り戻しつつあった日本人ですが、欧米の文化やライフスタイルに対する憧れは今と比較にならないほど大きかったと言えます。

一例をあげるとすれば「ファラ・フォーセット巻き」でしょう。70年代のアメリカ人スター、ファラ・フォーセットの髪型が若い女性の間で大流行したのです。当時の女性アイドルのヘアースタイルに統一感をもたらしたのが、ファラ・フォーセットのトレードマークであるサーファーカットでした。

「ハート形のチョコレートを贈ることで、女性から男性に愛を告白する日」という日本版バレンタインデーのコンセプトが受け入れられた背景にも「欧米のものなら」試してみてもいいか、という憧れがあったのかもしれません。その結果、おそらく欧米の女性でも簡単には受け入れないような大胆なコンセプトを日本女性が受け入れたてしまったことは、何とも皮肉な話です。

真の仕掛け人は誰だ?

さて、この日本女性のための愛の一斉告白イベントは、結果的に大成功を収めたわけですが、誰がこのコンセプトを思いついたのかは今もはっきりしないようです。バレンタインデーが定着する前の広告、あるいはブームが始まったとされる70年代の広告を見ても、「女性から男性へ愛を告白する日」という明確な提案は見当たりません。

ただ、誰が思いついたにせよ、日本にバレンタインデーを定着させたのはこの日本オリジナルの大胆なコンセプトだったと言えるでしょう。なぜなら、日本にバレンタインデーを定着させたとされる昭和の女子小中学生が「男性が愛する女性に愛の証しとしてプレゼントを贈る」というバレンタインデー本来のコンセプトに、ときめくことは決してなかったからです。

集団パニック状態に置かれた昭和の少女たち

「いったい誰が誰にチョコを贈るのか?(贈ったのか?)」という話題に夢中になった昭和の乙女たち。現在のようにスマホで簡単に情報交換することもできないまま過ごしたバレンタインデーの前後2週間は、一種の集団パニック状態に置かれたといっても過言ではありません。

ただ、こうした興奮状態にさらに拍車をかけていた存在がいたことは、これまであまり語られて来なかったように思います。その存在とは、当時全盛期を迎えつつあった少女漫画の伝説的な作家、陸奥A子さんです。

陸奥A子さんがバレンタインデーに注入したもの

まずは、陸奥A子さんの公式プロフィールをご紹介しましょう。

1954年生まれ。18歳で『りぼん』で漫画家デビュー。代表作「たそがれ時にみつけたの」でまたたく間に人気を得、1980年代にかけて『りぼん』の看板作家として活躍。おとめチックという新ジャンルを牽引

まさに、日本版バレンタインデーが定着したとされる1970年代から1980年代にかけて、小中学生向け3大少女漫画雑誌のひとつであるりぼんの看板人気作家として活躍された陸奥A子さん。繊細なタッチで描くラブ・コメディー知られ、日本伝統の奥ゆかしき乙女心を、現代的でポップな感覚のおとめチックとして蘇らせた伝説的な少女漫画家です。

現在40代後半以降の女性ならほとんどの方はご存知だと思いますし、男性でも独特のか細いキャラクターを記憶されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。陸奥A子ワールドにすっかりはまってしまい、自らの文章や話し言葉までキャラクターを真似る女子もいたほどです。

まとめ~おとめチックとバレンタインデー

不器用でおっちょこちょいな主人公は、相手に自分の想いを伝えられず、失敗ばかり。時には傷つきながらも相手の前では明るく振舞おうとする。そして誰よりも相手のことを想っている主人公。

昭和の少女たちは、陸奥A子さんが描くそんなおとめチックキャラクターと自分を重ね合わせることで、自分を勇気づけ、またたとえ恋が実らなかったとしても自分をなぐさめることができたのです。

友チョコはもちろん、本命チョコ 義理チョコ、ホワイトデーといった追加商材が開発されていなかったバレンタインデー黎明期に、恋の真剣勝負に挑む昭和の乙女たちに勇気を与えたおとめちっく。

その生みの親である陸奥A子こそが、日本版バレンタインデーを成功に導いた立役者だったと、私は信じています。


その大人気作家陸奥A子さんが手がけた連載作品にはバレンタインデーをテーマにした多くのエピソードがありますが、読み切り作品としてはこちらの2作品が知られています。現在も入手可能なのでご興味があればぜひ手に取ってみてください。

天使も夢見るローソク夜 1982年りぼん2月号から5月号連載
バレンタインデーの翌日、大停電の夜の不思議な出来事を描く4つのオムニバスストーリー。

Sweet Party(『流れ星パラダイス』1987年2月18日発行)
バレンタインデーの日のお菓子屋さんを描いた、かわいらしいショートストーリー。

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