【厳選】感動の海外公共CM特集『映像の力で交通事故から人々を救え!』

「人の命を救う仕事」と聞いて、あなたはどんな職業を思い浮かべるでしょうか?医師、救命医、警察官、あるいは消防官かもしれませんね。私はこれに「映像作家」を加えたいと思います。今回ご紹介する交通事故防止を訴えるための公共CMをご覧いただければ、きっとあなたにもご賛同いただけるはずです。

交通事故防止のための公共CM・二つの手法

ショッキング型

交通事故防止を訴えるための海外の公共CMの中には、ショッキングでリアルな事故シーンを取り上げたものが目立ちます。公共CMを見た人に、交通事故の加害者、あるいは被害者が感じる心理的、あるいは肉体的な痛みや、恐怖感、嫌悪感を与えることで、あたかも自分が交通事故の当事者になったような気分にさせるのがショッキング型の手法です。

ショッキング型の手法には二つの目的があると思います。まず一つ目の目的は、交通事故の当事者として味わった恐怖感や嫌悪感をできるだけ長く記憶にとどめてもらうこと。そして二つ目の目的は、CMに対するセンセーショナルな話題を集めることで、より多くの人たちにメッセージを届けることでしょう。

私はこのショッキング型の公共CMをいくつか見ましたが、あまりにも表現が過激すぎるものについては否定的にならざるを得ませんでした。というのも、おそらく人はあまりにもショッキングな映像を見ると、脳内で自己防衛機能が働き、忌まわしい記憶として拭い去ろうとするからです。

見る人を選ばず、ランダムにメッセージを届けようとする公共CMというメディアでは、なおさらそうした傾向が強まるのではないでしょうか?

問題提起型

交通事故防止のための公共CMで使われているもう一つの手法が、交通事故について見る人に考えるきっかけを与えようとする問題提起型です。映像を見て感じるという体験に、考えるという体験を加えることで、見る人にメッセージをより深く受け止めてもらい、確かな記憶として定着させようという試みです。

今回は問題提起型の例として、3つの公共CMをご紹介したいと思います。

海外公共CM優秀作品その①『ミステイク』

まず一つ目は、2014年にニュージーランドの運輸省が公開した公共CMです。こちらには、一部ショッキング型の手法が取り入れられていますので、ご注意ください。(心配な方は、下にあらすじを書いておきますので、まずはそちらをお読みください。)

(日本語字幕を表示させる場合は、Youtubeスクリーンの「設定ボタン」(歯車のアイコン)をクリックし、(字幕→自動翻訳→日本語)の順に選択してください。)

衝突は不可避と思えた事故の瞬間、なぜか時間が止まります。止まった時間の中で、お互いに車を降りて歩み寄る二人のドライバー。十分な一旦停止を怠った子供連れの父親は、自分の過ちを悔い対向車を運転するビジネスマンに許しを請います。一方、相手の車の後部座席に少年の姿を見て動揺するビジネスマン。彼が自分の車の運転席に戻って見たものは、速度オーバーの値を指したスピードメータでした。二人がそれぞれのドライバーシートに戻ると、突然時間が元に戻ります。運命に逆らえずに激しくぶつかった二台の車を捉えたところで映像は終わります。

不注意が取り返しのつかない事態を招くことを伝えるパワフルな映像です。

海外公共CM優秀作品その②『ゼロを目指して』

次にご紹介するのは、2015年にカナダのビクトリア州運輸事故委員会が公開した公共CMです。インタビューアーに、昨年度にある道路で発生した死亡事故の犠牲者数が249名であることを伝えられた男性が「あなたはこれが何人ぐらいなら許容範囲内だと思いますか?」と質問されています。

(日本語字幕を表示させる場合は、Youtubeスクリーンの「設定ボタン」(歯車のアイコン)をクリックし、(字幕→自動翻訳→日本語)の順に選択してください。)

男性は「許容範囲」という言葉に一瞬戸惑いを見せた後「まあ、70人ぐらいかな」などと当たり障りのない数を答えます。するとインタビューアーはおもむろにトランシーバーを取り出し「70人送ってくれ」と誰かに指示を与えます。通りの角から現れたのは、「単なる数」ではない「70名の人々」、そして男性は、その先頭に本物の自分の家族を見つけます。

1分間の長さでこれほどパワフルな映像作品にはめったにお目にかかりません。ドキュメンタリーというのが信じられないほど、カメラアングル、カット、キャスティング、そして音楽と、どれをとっても完璧です。

WEB上では、舞台裏の動画も複数公開されています。かつての公共CMが見るだけの、いわば受け身の体験だったのに対し、この公共CMでは、テーマや背景について自分で調べるという自発的な体験の要素も加わっているのです。見る人に対するメッセージ効果をより高めるために、公共CMも見るだけの時代から、参加する時代に進化したと言えそうです。

海外公共CM優秀作品その③『スピードを見直せ』

最後にご紹介するのは、同じくカナダ・ビクトリア州運輸事故委員会が2016年に公開した公共CMです。ほぼ映像のみの力で、結果とそれを招いた原因に対するドライバーの責任を訴えています。

(日本語字幕を表示させる場合は、Youtubeスクリーンの「設定ボタン」(歯車のアイコン)をクリックし、(字幕→自動翻訳→日本語)の順に選択してください。)

「あなたがスピードを決め、スピードが結果を決めます」というナレーションの後で、カメラが全景を捉えると、巨大なスピードメーターが現れるというアイデアです。「結果にはそれを招いた原因があり、その原因を生じさせたのはあなたの自身だ」というメッセージは最初のCMと共通しています。

自分の誤った行いが、悲惨で恐ろしい結果を招きかねないということは、誰もが理解しているはずです。ただ問題は、それらの結果をイメージするために必要な想像力に個人差があることではないでしょうか。

公共CMの重要な役割のひとつは、想像力の個人差によるそうしたギャップを埋め、人々の交通事故に対する認識を等しく高めることにあると言えそうです。

まとめ

日本の公共CMにも優れた作品はあると思いますが、交通事故防止を訴えたものについてはあまり記憶がありません。

自動車運転免許取得時や更新時に、運転免許試験所や警察署で視聴する教育ビデオも悪くないと思いますが、こうした公共CMと比較した場合、その効果には疑問も残ります。

交通事故からより多くの人々の命を救うために、日本でも公共CMが普及することを願ってやみません。

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