ブロックバスター・フィルムと言われるハリウッドの大作映画からインディペンデント映画まで、気になる日系俳優のみなさんをピックアップしてみました。
注目の4人の若手日系俳優
福原 カレン(アメリカ)
ロサンゼルス出身で両親は日本人の福原かれん。UCLAに通っている時に日本のディズニー・チャンネルやNHK・BSのスポーツ番組にリポーターとして出演していた彼女が最初につかんだ映画出演のチャンスはあまりにも特別でした。
2016年のアメリカ国内年間興行収入ランキング第9位の大ヒット映画『スーサイド・スクワッド』に日本人暗殺者・山城たつ(またの名をカタナ)役で出演し一気にハリウッド・セレブの仲間入りです。監督候補にメル・ギブソンの名前もあがっている続編での活躍も約束されたも同然でしょう。
強みは空手の経験で、第二のミッシェル・ヨーを目指して欲しいものです。自分で売り込んだとされる(!)『スーサイド・スクワッド』のスピン・オフが製作される可能性も充分あるのではないでしょうか。
菊池 凛子 (日本)
ハリウッドで活躍する日系の女優で断トツの知名度を誇るのは、2006年に公開された『バベル』に出演しアカデミー助演女優賞にノミネートされた菊地凛子でしょう。2013年の『パシフィック・リム』に出演したことで知名度が大幅にアップしました。
2018年公開予定の『パシフィック・リム』の続編への出演も決まっていますが、監督は、日本の怪獣オタクとしても知られるギレルモ・デル・トロからスティーヴン・S・デナイト(初監督)に交代するほか、ハリウッド大作『キングコング:髑髏島』にも出演する中国人女優・景甜がキャスティングされており、前作同様、準主役級の出演機会があるのか疑問です。
ちなみに制作会社レジェンダリー・ピクチャーズは2016年1月から中国資本となっています。彼女は英語もものすごく上達しているので、ハリウッドの女優としてさらに上を目指して欲しいと思います。
ソノヤ ミズノ(イギリス)
父親が日本人、母親がイギリス人のソノヤ・ミズノも注目の日系女優です。東京生まれのイギリス育ちで、ヨーロッパの複数のバレエ団で活動した元バレリーナです。
映画初出演は、2015年に公開されたアレックス・ガーランド監督のSFスリラー映画『エクス・マキナ』で、セリフがほとんどない役にもかかわらず抜群の存在感を示していました。その後は、2016年公開のダンス映画『High Strung』に出演したほか、同年の終わりに公開されアカデミー賞の最多ノミネート記録に並んだ『ララランド』にも出演しています。(下のPVにも登場しています。黄色いドレスが彼女です。)
次回作は2017年4月21日公開予定の『美女と野獣』。これまでの出演作はどれもダンサーとしての才能を活かせる役で、しかも話題作ばかりでした。映画出演はまだ少ないですが、生まれ持った運の強さを感じさせます。
山口 貴史(日本)
山口 貴史は舞台を中心に活動していた日本の俳優で2003年の『ラスト サムライ』や2006年の『硫黄島からの手紙』に脇役で出演。2010年から活動の場をアメリカに移し、2016年1月に開催されたサンダンス映画祭に出品された『Sophie and the Rising Sun(ソフィーとライジングサン)』に出演しています。
『Sophie and the Rising Sun(ソフィーとライジングサン)』は2001年に出版された同名小説が原作のドラマで、1941年のアメリカが舞台となっています。異人種間の恋愛を描いたこの作品で、山口 貴史は主人公の恋人となる日系アメリカ人の役を演じています。インディペンデント系とは言え、日本生まれの俳優が恋愛ドラマでこれほど重要な役を演じたのはハリウッド草創期に活躍した千葉県生まれの早川雪舟以来の快挙ではないでしょうか?
英語は37歳で渡米してから習得したとのことですが、わずか5年程度でアメリカ人役、しかもメイン・キャラクターを演じられるまでの語学力を身に着けるのは容易なことではなかったと思います。『Sophie and the Rising Sun(ソフィーとライジングサン)』は2017年1月からアメリカ国内で小規模公開され、反応もまずまずのようです。日本での公開は未定のようですが、機会があればぜひ見てみたい作品です。
まとめ
ハリウッド映画のアジア系の役は依然として”小さい”ものが多いですし、競争を勝ち抜いて出演機会をものにするのは並大抵のことではありません。菊地凛子の『パシフィック・リム』の続編出演も1作目のファンからすれば当然という気もしますが、中国市場のセールス拡大を虎視眈々と狙う映画会社は、登場人物の設定変更程度なら何のためらいもなく行うでしょう。
中国市場向けの作品がさらに増えるのは確実で、さらにネット配信作品の増加という追い風も受け、アジア系俳優の出演機会は確実に増えていくことでしょう。ただし、日系俳優がその恩恵を受けられるかどうかは実力次第でしょう。
製作サイドが優遇するはずの中国系キャストとの競争に勝たない限り、厳しい状況に変わりはないと思います。