世界最大の家具メーカー・イケア。手ごろな価格と優れたデザイン、そして充実したアフターサービスも人気の理由です。日本でも8店舗を展開するイケアの知られざるエピソードをご紹介します。
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1:「イケア」の意味
イケア(IKEA)は頭文字を組みあわせた造語です。IとKは創業者Ingvar Kamprad(イングヴァル・カンプラード)のイニシャル、Eは創業者が育った農場の名前Elmtaryd、Aは創業者の出身地でスウェーデン南部の都市名Agunnarydからぞれぞれ取ったものです。
2:創業者のシンプルなライフ・スタイルは虚構だった?
1926年にスウェーデン南部のスモーランド地方に生まれたイングヴァル・カンプラードは、17歳で雑貨の通信販売会社イケアを創業、後に世界有数の大富豪となりました。
カンプラードは成功を収めた後も質素な家に住み、古いボルボを運転。旅先では安いホテルに宿泊し飛行機はエコノミーを利用するなど、飾らない彼のライフ・スタイルに人々の関心が集まりました。
ところが、その後暴露本が出版され、カンプラードが海外に豪華な別荘や高級車を所有していることが明らかになりました。カンプラード自身も、自分のシンプルなライフ・スタイルを宣伝に利用したのは、節税対策と企業イメージアップのためだったことを認めています。
3:政治的な理由で国際的な批判の的に・・・
創業者のイングヴァル・カンプラードは、ドイツ系移民でナチ支持者だった祖母の影響で、若いころはナチスに傾倒していたと言われています。また2011年に取材を受けた際に、かつて親交があったスウェーデンの極右指導者への忠誠心を口にしたことから、再び国際的な批判を受けました。
こうしたナチスとの関わりからイケア各店では過去に何度か抗議活動が起きています。(2015年にはモスクワ店が第二次大戦の退役軍人の襲撃にあっています。)
カンプラードは過去の自分の行いについて「愚かなこと」で「人生最大の過ちだった」と発言するとともに、全従業員宛てに謝罪の手紙を送っています。
4:商品名にスウェーデンの地名が使われている理由
創業者のイングヴァル・カンプラードは若いころに学習障害を発症し、商品名を記憶することが困難になりました。そこで少しでも商品を覚えやすくするために、リビング・ルームに置くアイテムにはスウェーデンの地名を、バスルームに置くアイテムにはスウェーデンの川や池の名前を付けたのです。
5:史上初めてゲイのカップルが登場するCMを製作
イケアは1994年に大企業としては初めて、自社の広告に「養子縁組による親子」、「シングル・マザーの親子」の他に、「ゲイのカップル」を登場させ、家族の多様性を認める姿勢を示しました。
6:聖書を上回るカタログの発行部数
経済紙エコノミストによると、聖書の発行部数が毎年1億冊なのに対し、イケアのカタログは27言語別に製作される各バージョンの合計で毎年1億8000万冊発行されているそうです。
7:世界の木材需要の約1%を消費
毎年1億個の木製家具を製造販売するイケアの木材消費量は、世界全体の需要の約1%に達するそうです。(参照:Daily Mail) なおイケアでは、違法伐採された木材が使われることが無いようにサプライヤーの管理を徹底しているそうです。
8:家をまるごと販売
イケアは、2012年にAktiv(スウェーデン語でアクティブ、活動的)と名づけられた省スペース・プレハブ住宅の販売を発表しました。メイプル材のフローリング、キッチンおよびバス・ルームキャビネット、ハイテクの省エネ電源装置などが組み込まれていて、お値段は8万ドルだそうです。
なお各建築資材は、家具同様フラットパックで梱包されていますが、購入者が組み立てる必要はないようです。(参照:ZDNET)
9:ヨーロッパでは10人に1人がイケアで寝ている
いかにイケア製の家具がヨーロッパに浸透しているか分ります。(参照:Yahoo)どおりでヨーロッパが舞台の映画を見ていると、イケア製の家具をよく見かけるわけですね。
10:創業時から今日までのイケアの歴史が分かる博物館をオープン
2016年夏にイケア一号店があったスウェーデン南部の小さな町、エルムフルトにイケア・ミュージアムがオープンしました。これまでに発表した家具はもちろん、ナチス・ドイツの影響を受けた創業者の過去に触れた展示もあるそうです。(参照:AFP)
11:シリア難民キャンプにシェルターを供給している
イケア製の難民用シエルターは、今日人類が直面している最も深刻な問題のひとつであるシリア難民問題に対応するために国連の依頼でイケアが開発したものです。徹底した軽量化と耐久性が図られた各部品は、必要最低限の工具を使って一棟あたり最短4時間程度で組み立てられるように設計されれています。なお、シェルターの各部品はイケアの家具同様フラットパックで梱包され難民キャンプに送られます。
イケア製シェルターには、5人家族が快適に生活できるような居住性が確保されており、太陽光発電による電源装置を備えています。これにより毎晩4時間程度、電気の明かりの下で家族が一緒に過ごすことができます。
一棟あたりの価格は1000ドルで、国連は既に10000棟をイケアに発注。そのうちの2600棟はイラクに、残りはヨーロッパ中に送られる予定です。なおタイム誌はこのシェルターを『2016年のベスト発明品ベスト25』の一つに選んでいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?イケアと言えば、洗練されたデザイン、徹底した生産・物流効率の追及が可能にした低価格、そして顧客対応が行き届いた店舗運営が特徴的な先進企業のイメージが定着していますが、創業者の過去にまつわる負の遺産を抱えた企業という側面があることは日本ではあまり知られていません。
新しいミュージアムの展示内容にも見られるように、過去の問題と誠実に向き合ったうえで、難民用のシェルター開発を通じて人類の未来に貢献しようとする企業姿勢は素晴らしいの一言です。
一日も早く東海地方にも出店していただきたいものです。