『ディバイナー 戦禍に光を求めて』人一倍責任感が強いオーストラリア人の父親に訪れた奇跡(映画レビュー)

人一倍責任感が強いオーストラリア人の父親に訪れた奇跡を、オーストラリア人ラッセル・クロウが責任を持って世に送り出した佳作です。


2014・アメリカ・オーストラリア(原題)The Water Diviner(監督)ラッセル・クロー(脚本)アンドリュー・ナイト、アンドリュー・アナスタシオス(音楽)デヴィッド・ハーシュフェルダー(撮影)アンドリュー・レスニー(編集)マット・ヴィラ(出演)ラッセル・クロウ、オルガ・キュリレンコ、ジェイ・コートニー、チェム・イルマズ、イルマズ・アルドアン

あらすじ

水脈を探し当てる職人(ディバイナー)である、オーストラリア人ジョシュア・コナー(ラッセル・クロウ)は、ガリポリの戦いから4年後、戦争で行方不明になった3人の息子たちの最期を知るため、トルコへと旅に出る。故郷から遥か遠い異国の地での捜索は困難を極めるが、コナーの決意は決して揺らがない。イスタンブールで宿を営む美しい女性アイシェ(オルガ・キュリレンコ)や、息子たちと戦ったトルコの英雄・ハーサン少佐(イルマズ・アルドアン)らの助けを借りながら、コナーはついに一縷の希望を掴むのだが… (引用元:公式サイト

みどころ

第一次世界対戦に参戦したオーストラリアは連合軍の一翼を担って同盟国側のオスマン帝国(現トルコ)と闘います。激戦地ガリポリで行方不明となった3人の息子を、戦争終結の4年後に探し出そうとする父親の物語は、実話をベース(※)にしていることを疑いたくなるようなドラマチックな展開を見せます。

第一次大戦に派遣されたオーストラリア軍

第一次世界大戦にイギリス連邦国として参戦したオーストラリア軍。イギリスの植民地から独立したばかりのオーストラリアは、第一次大戦屈指の激戦地ガリポリに派兵します。オーストラリア人のラッセル・クローは、故国から遠く離れた戦場に派遣されたオーストラリア軍兵士の心境を巧みに表現しています。

きちんと描かれたイスラム文化

ラッセル・クロウは、ガリポリの戦いで敵として戦ったオスマン帝国を公平に、丹念に描いています。昨今の娯楽映画で、イスラム文化を肯定的に描く映画は珍しいのではないでしょうか。ラッセル・クローのこうしたアプローチは、物語のリアリティと品位を高めています。

オルガ・キュリレンコの好演


戦争未亡人を演じているウクライナ人のオルガ・キュリレンコが、トルコ人役を見事に演じています。『007 慰めの報酬』のボンドガール役で一躍有名になったキュリレンコですが、モデル出身ということで過小評価されているのではないでしょうか。

今回の酔い加減査定

最高酔える度5~最低酔えない度1

実話がベース(※)の戦争もの、歴史ものということで敬遠される方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は家族で安心して楽しめる娯楽性の高い作品です。

物語を構成するホームドラマ、冒険活劇、ラブロマンスのバランスに多少問題があるように感じました。キャラクターの掘り下げに不十分な点が見られたのはそれが原因だと思います。

オルガ・キュリレンコが演じる宿屋の女主人のキャラクターは不必要ではないかという指摘があったとしても驚きませんが、全体のまとまりをつくりながら観客層を広げることに成功したと思います・

初監督作品で主演も兼ねたラッセル・クロウのまとまりのある演出によって辛くも救われた愛すべき佳作です。

(※追記:ネタバレ注意:実話の範囲)実話の範囲ですが、ガリポリに息子の墓を探しに来たオーストラリア人の老人がいた、というところまでのようです。当初はドキュメンタリー映画を製作しようとしていた脚本家のアンドリュー・アナスタシオスがこのストーリーに興味を抱き1年以上調査したものの詳細を突き止められなかったようです。(参照:USA TODAY


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