『スプリング・ブレイク』は、直訳すれば『春休み』ですが、アメリカの大学生にとっては単なるバケーションとは異なる意味を持っています。
By Cat Branchman
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「文化としてのスプリング・ブレイク」とは?
文化としてのスプリング・ブレイクの歴史は、第二次世界大戦前の1936年にまでさかのぼることができます。アメリカのコルゲート大学の水泳部が、フロリダ州のフォート・ローダーデールに建設されたカジノに併設された同州初のオリンピック・ザイズのプールで合宿したことが始まりとされています。
その後20年以上に渡りアメリカ中の大学の水泳部が集まるようになったことで、フォート・ローダーデールは大学生が集まるフロリダのリゾート地として有名になったようです。
1961年には『Where the boys are (邦題:ポーイハント)』という、フォート・ローダーデールを舞台にしたラブ・コメディ映画も公開されています。どうやらこの頃までには「フロリダのフォート・ローダーデールで過ごすお洒落なバケーションこそ、理想のスプリング・ブレイクである」というイメージが固まっていったのでしょう。
スプリング・ブレイクの商業化が生んだ社会問題
1970年代に入ると、文化としてのスプリング・ブレイクに変化があらわれます。いわゆるラブ・アンド・ピースの時代を経験したアメリカの大学生は、文化としてのスプリング・ブレイクに、より多くの自由や開放感を求めるようになります。こうした変化はやがて学生たちのライフスタイルにも及びはじめ、飲酒が原因の事件や事故が増加するなど、フォート・ローダーデールの住民たちの不安を煽り始めます。
そうした住民の不安をよそに、スプリング・ブレイクのメッカとしてのフォート・ローダーデール人気はさらに高まっていきました。1983年には、今日まで続く文化としてのスプリング・ブレイクの負のイメージを生み出した元凶とも言うべきコメディ映画『スプリング・ブレイク』が公開されます。
この映画の成功がスプリング・ブレイクを商業化する道筋をつけ、やがて度を越えた飲酒や性の乱れといった問題を引き起こし、結果的に学生を危険にさらすことにつながったのです。
「スプリング・ブレイクのメッカ」を返上した市長の決断
1985年には、人口15万3000人程度のフォート・ローダーデールに毎年37万人もの大学生が押し寄せる事態となり、さすがに住民の忍耐も限界を超えたようです。同じ年にテレビ出演した市長が『これからは学生を歓迎しない』と宣言し、「スプリング・ブレイクのメッカ」として全米に知れ渡っていた市の名声を自ら捨て去ったのです。
市長の「脱スプリング・ブレイク宣言」に前後して始められた屋外の飲酒などに対する罰則強化と取り締まり強化により、フォート・ローダーデールを訪れる大学生の数は3年間で30万人近く減少したと言われています。
スプリング・ブレイクの健全化?
スプリング・ブレイク発祥の地であるフロリダ州フォート・ローダーデール市に門戸を閉ざされたスプリング・ブレイク・ムーブメントですが、社会の厳しい眼差しが向けられたことで、徐々にその勢いを失っていきます。
1986年には、若者文化に圧倒的な影響力を持っていたMTVが、フロリダ州デイトナ・ビーチからスプリング・ブレイク特番を初めて放送しました。大学生を含むティーンエイジャーをターゲットにしたこの番組は、たちまち人気番組となりましたが、番組に対する社会的な批判が次第に高まり、MTVは番組内容の変更や放送規模の縮小を余儀なくされました。
なお、番組は現在も放送されていますが、放送開始当初は1週間以上確保されていた放送時間が、現在は週末限定の数時間に縮小されたようです。
スプリング・ブレイク・今日の実態
それからさらに30年近く経過した現在、アメリカの大学生は、スプリング・ブレイクについてどのように考えているのでしょうか。
2014年3月にCentury Council(現Foundation for Advancing Alcohol Responsibility)が実施したアンケート調査によると、スプリング・ブレイクの予定を尋ねられた大学生の大半が、勉強やボランティア活動、あるいは家族と過ごすと回答したそうです。
また、58%の学生が、学生のスプリング・ブレイクの過ごし方についてメディアは実態を正しく伝えていないと回答したそうです。(引用元:PRNewsWire)
さらに、2015年3月にStudy Breaks College Mediaが行った調査では、スプリング・ブレイクに旅行に出かける3分の2の学生が、500ドル以上使うと回答しているようです。また、スプリング・ブレイクの目的地について質問したところ、以下のような回答があがったようです。
デンバー16%、オースチン、カンクン ともに7% サウスパドレ島 6%、マイアミ6%、 パナマシティビーチ6%、その他39% (引用元:prweb)
こうした結果を見ると、1980年代から90年代にかけてできあがった文化としてのスプリング・ブレイクの悪しきイメージは、実態とマッチしなくなってきたようです。1980年代に青春時代を過ごした親御さん世代にとっては喜ばしい傾向と言えそうです。
また、学生がスプリング・ブレイクに費やす費用もピーク時に比べるとずいぶん減ってきたようです。上昇し続けるアメリカの大学の学費が、家計を圧迫しているのかもしれません。
スプリング・ブレイク人気の目的地ベスト10
ここで、全国紙USAトゥデイに掲載された、スプリング・ブレイクの人気目的地ベスト10をご紹介します。なお、こちらの調査対象には社会人も含まれているようです。
Cabo San Lucas, Mexico
バハカリフォルニア半島最南端に位置するリゾート地、カボサンルーカスはメキシコの高級リゾート地として知られています。ロスから飛行機で2時間で行けるため、ハリウッド・セレブの出没率が高いようです。
By Nan Palmero
Panama City Beach, Fla.
フロリダ州内のビーチリゾートでとりわけ人気が高いのが、パナマシティです。全長27マイルにおよぶ白い砂浜で知られています。
By Rosan Nepal
Austin
テキサス州の州都オースティンは年間を通じて温暖な気候に恵まれています。ハイテク産業を中心に大企業が数多く進出しています。またライブハウスが多い音楽の街としても知られています。
By Stuart Seeger
Tampa
フロリダ半島の中西部に位置しメキシコ湾に面するフロリダ州第三の都市タンパは、マリンスポーツのメッカとして知られています。
By Joe
New Orleans
メキシコ湾に面しミシシッピ川の河口に位置する港湾都市で、かつてのフランス植民地として知られています。ジャズの発祥地、美食の町としても知られています。
By Eric Gross
South Padre Island, Texas
テキサスの南端に近いサウス パドレ アイランドは、メキシコ湾にあるこの防波島です。美しい夕日とマリンスポーツで知られています。
By Vince Smith
Las Vegas
多くのカジノ・ホテルは複合型レジャー施設の一部となっており、ギャンブルをしなくてもテーマパークやショッピングモールなどで十分楽しめます。
By SD Dlrk
Cancun, Mexico
カリブ海沿岸、ユカタン半島の先端に位置する観光都市で、高級リゾート地として世界的に有名です。チェチェン・イッツアなどの遺跡観光も人気があります。
By Trans World Production
Miami
言わずと知れたフロリダ州最大の都市で、年間を通じて温暖な気候に恵まれた世界的な観光都市です。アメリカ人にとってリタイア後の移住先として人気が高い街としても知られています。
By Eddy
Los Angeles
アメリカ第二の都市です。エンターテイメント産業の中心ハリウッドや太平洋を望むサンタモニカビーチなど観光スポットが数多くあります。
By isaiah v
まとめ
いかがでしたでしょうか?スプリング・ブレイク人気目的地ベスト10の中には、学生にも人気がありそうなビーチリゾートと、音楽やアートなどが楽しめる大人向けの目的地が含まれているようです。
スプリング・ブレイクのイメージは、時代と共に変化しているようで、元留学コーディネーターとしてはちょっと安心しました。ただ、アメリカの大学生がよく勉強するのは、昔も今も変わらないみたいですね。(参考:TIME A BRIEF HISTORY OF Spring Break)
コメント
[…] (スプリングブレイク文化についてはこのサイトに詳しく書かれておりとても勉強になる) […]