マイロ・ヤノプルスは、ケンブリッジ大学中退の明晰な頭脳、イケメン系オネエのルックスが特徴的なオルタナ極右の論客です。欧米主流ニュースメディアで引っ張りだこのマイロ・ヤノプルスは、どの様な主張の持ち主なのでしょうか?
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マイロ・ヤノプルスのプロフィール
- 1984年10月19日生まれ。イギリス国籍(父親はギリシャ人、母親はイギリス人
- マンチェスター大学中退、ケンブリッジ大学中退
- ジャーナリスト、作家、起業家、ニュースサイト「ブレットバート・ニュース」シニア・エディター
- イギリスのデイリー・テレグラフ紙でコンピューター・テクノロジー関連記事を担当。その間、ケーブルニュースのSky News、BBCに出演。また、テレビ番組のNews nightではゲイの結婚をテーマにした討論番組に、チャンネル4の10 O’Clock Liveでは元カルチャークラブのボーイ・ジョージを交えた討論番組にそれぞれ出演。
- オンラインマガジン「The Kernel」(2012~2013)を立ち上げる。
(参照:Wikipedia英語版)
マイロ・ヤノプルスがもてはやされる理由
最初はキワモノあつかいされたマイロ・ヤノプルスですが、近頃はアメリカの大手ニュースメディアでコメンテイター、あるいはライターとして活躍の場を広げています。
さらに全米各地の大学から招かれて講演会を行うなど、今や右派からだけでなく左派からも注目される存在となっています。マイロ・ヤノプルスにこれほどまでに注目が集まるのは何故でしょうか?
ツイッターでアカウントが永久はく奪になるほど過激だから
マイロ・ヤノプルスの名前を一躍有名にするきっかけを作ったのがこちらの映画『ゴーストバスターズ』です。
2016年に公開された『ゴーストバスターズ』は、1984年に公開されて大ヒットした同名映画のリブート作品です。4人のメインキャラクターが全員女性となりましたが、そのうちの1人パティ・トランを演じたレスリー・ジョーンズ(上の動画サムネイルの右から1人目)を標的とした人種差別的、あるいは女性差別的なツイートが蔓延しました。
そうした差別的なツィートの代表的な発信者として、オルタナ右翼のニュース・サイト『ブレット・バート』のライターだったマイロ・ヤナプロスに批判が集中します。マイロ・ヤノプロスは、レスリー・ジョーンズの容姿をゴリラにたとえたり、男(Dude)呼ばわりしたのです。
I just don’t understand pic.twitter.com/N9xWoXPttu
— Leslie Jones (@Lesdoggg) 2016年7月18日
この騒動を受け、ツイッター社はマイロ・ヤノプルスのアカウントを単に停止するだけでなく、永久にはく奪します。ツイッター社はツイート内容に関するガイドラインを公表しないため、マイロ・ヤノプルスのツィートのどこが問題だったのか、具体的には分かっていません。こうしたツイッター社の対応について、マイロ・ヤノプルスは「おくびょう者」と批判しました。
CNNのインタビューでレスリー・ジョーンズを「醜い、醜い、醜い、太っちょ」と揶揄したことの真意を問われたマイロ・ヤノプルスは「自分は現実主義者だ」「美に対する基準を軽んじるのには反対だ」というように、まるで悪びれることなく答えています。
なおアカウントが永久にはく奪された時点で、マイロ・ヤノプルスには約30万人のフォローワーが存在していました。彼のフォロワーは、すぐに#FreeMiloというハッシュタグが作りツイッター社の決定に対する抗議活動を始めましたが、マイロ・ヤノプルスのツイッターアカウントは今も閉鎖されたままです。
リベラルに支配された主流メディアに対抗する姿勢がカッコいいから
マイロ・ヤノプルスは、CNBCの番組に出演し「オルト右翼」と「白人至上主義」の違いについて聞かれ「オルタナ右翼は白人至上主義というより西側至上主義だ。言うなれば自由主義的なカソリック系の民主主義社会至上主義であり、自由や平等の価値を重んじる社会だ」とし、「オルタナ右翼」と「白人至上主義」「排外主義」「人種差別主義」を結び付けてレッテル張りするメディアをやんわりと批判しています。
このビデオもそうですが、3人のリベラル派を相手に冷静かつ知的に反駁する姿勢は確かにかっこよく見えます。リベラルが主流となった今日のメディア社会にあってマイロ・ヤノプルスは少数派の抵抗勢力と見なされ、ネット社会を中心に次第にヒーロー扱いされるようになりました。
社会的弱者としての立場を利用して他の社会的弱者を厳しく批判することができるから
ここまで見てきたマイロ・ヤノプルスは、思ったことをすぐに口にするだけの無害なお調子者に映るかもしれませんが、彼の攻撃的な姿勢にはやはり特筆すべきものがあります。
例えばこちらの動画ですが、後援会場にいたイスラム教徒の女性達にヤジを飛ばされると、彼女たちのヒジャブ姿をこき下ろしながらイスラム教を容赦なく執拗に攻撃します。
ポリティカル・コレクトネスが定着した社会では、イスラム教徒を含むマイノリティが、公の場でこうした攻撃を受けることはこれまでは滅多に無かったはずです。(この映像に映っているイスラム教徒の女性たちの表情がそれを物語っていると思います。)
マイロ・ヤノプルスやスティーブ・バノンなどオルタナ右翼の人達に共通する姿勢は、イスラム教を批判することに躊躇しない事だと思います。これにはポリティカル・コレクトネスに対する反動もあると思いますが、敬虔なカソリック信者としての自信に裏打ちされた宗教的な動機に基づく姿勢と言えるかもしれません。
特にマイロ・ヤノプルスの場合は、自らがゲイ・コミュニティーという社会的弱者グループに属していることを逆手に取り、イスラム社会のゲイ・コミュニティーに対する非寛容さを徹底的に叩こうとします。この「社会的弱者が社会的弱者を攻撃する」という構図が、マイロ・ヤノプルスの攻撃的な姿勢に対する人々の批判をそらす役割を果たしているように思えます。
まとめ
先日カリフォルニア大学バークレイ校で予定されていたマイロ・ヤノプルスの講演会が反対派の抗議活動で中止になるという事件がおきました。(参照・ロサンジェルス・タイムス)
マイロ・ヤノプルスが一定の支持を集めるなか「ヘイト・スピーチ」と「フリー・スピーチ」の定義の曖昧さは今後も議論の対象になることでしょう。また、そうした状況は日本においても全く同じだと思います。