映画「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」は、驚愕の実話を映画化した、涙なくしては見れない感動の話題作です。はたして「どこまでが実話なのか?」映画を見た後に抱いた疑問点とあわせて徹底解明します。(ネタバレがありますのでご注意ください。)
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「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」あらすじ
5歳で迷子になり孤児院に送られた貧困家庭出身のインド人少年サルーは、養子としてオーストラリアに移住します。インドの家族に無事を伝えたい一心で、かすかな記憶とインターネット情報(グーグル・アース)だけを頼りに故郷を探し当て、25年ぶりに母親と再会します。 (参照:公式サイト)
「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」のお勧めポイント
①色調を抑えた、美しく奥行きの深い映像②自然な子役の演技(キャスティング)③詩的で映像にマッチした音楽
「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」は自宅で観ても楽しめるか?
ご自宅でも楽しめる作品だと思いますが、映画館で見ることをお勧めします。最大の理由は映像美です。 ロングショットで撮影したインドの自然や都市の風景が、主人公の孤独感や心象風景を巧みに表現しています。それらを満喫するためには、スケール感と細部を損なうことが無い映画館のスクリーンが最適だと思います。
「どこまでが実話なのか?」映画「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」を見た後に抱いた疑問点を徹底解明
ここから先はネタバレを含みます。まだ映画「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」をご覧になっていない方はご注意ください。
サルーの実の父親は?
サルーの実の父親ムンシは、サルーが3歳の時に家族を捨て、他の女性と結婚しました。サルーが父親に会ったのは2回だけです。(ソース:Real Big Things)
サルーはどうして回送列車に乗ってしまったのか?
小銭を拾うためにブルハーンプルという駅まで2時間ほどかけて列車で移動したサルーと兄のグドゥ。疲労で体調を崩したサルーをホームに残し、グドゥは1人で小銭探しに出かけます。 「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」では、走行中の回送列車の中で目を覚ましたサルーが、兄を探して無人の列車内をさまよう、という場面がありました。これは事実と若干異なるようです。
駅のホームで目を覚ましたサルーは、グドゥが戻って来ないことで気が動転し、兄を探して停車中の回送列車の車内に入ったようです。列車はサルーを乗せたまま発車してしまい、その後は「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」で描かれていたとおり、車内に閉じ込められたまま現在のコルカタまで1600キロも運ばれてしまったのです。(ソース:60 minutes)
路上生活はどのくらい続いたのか?食べ物はどうしていたのか?
コルカタに着いたサルーが保護されるまでの期間は3週間。その間は、路上で残飯などを拾って食べていたそうです。 また「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」でも触れられていたように、コルカタで使われている言語はベンガル語ですが、サルーはヒンドゥー語しか話せませんでした。(ソース:SarooBrierley.com、60 minutes)
なぜ誰かに自分の苗字を伝えなかったのか?
5歳のサルーは字が読めず、数も数えられませんでした。また自分の住んでいた町の名前はおろか自分の苗字さえも知らなかったのです。(ソース:VanityFair.com)
保護されてから養子になるまでの過程は?
「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」では路上にいるサルーを見かけ気の毒に思った男性が警察署に連れていくシーンがありましたが、これも事実とは多少異なるようです。 サルーを見かけ気の毒に思った男性(「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」で描かれていたとおりベンガル語スピーカー)が3日間ほどサルーを自宅に預かった後に、地元の刑務所に連れて行ったようです。その翌日、刑務所はサルーを少年院に移送します。 その後は「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」同様、養子縁組をサポートするNPO法人がサルーを孤児院に移送し、養子縁組の確率を高めるための基礎的な学力や英語、しつけを教えました。そして、幸運にもブライアリー家に引き取られることになったのです。(ソース:VanityFair.com)
「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」キャストと御本人
左から①サルーの育ての母親・スー・ブライアリー(本人)、②スー役のニコール・キッドマン、③サルーの実母カムラ役のプリヤンカ・ボセ、④サルー(幼少期)役のサニー・パワール、⑤サルー・ブライアリー(本人)、⑥サルー役のデブ・パテル
サルーの恋人は実在するのか?
モデルとなった女性は実在します。「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」でルーニー・マーラが演じたルーシーはアメリカ人という設定でしたが、実際はオーストラリア人のリサ・ウイリアムズさんです。 「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」と同様、サルーは回線速度が速いリサさんのアパートでグーグル・アースを試すようになります。また、それをきっかけに、生まれ故郷を見つけたいと強く願うようになったのです。
なお、「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」ではデブ・パテルとルーニー・マーラのキス・シーンが全くありませんでした。その理由は、90年代以降、インド映画ではキスシーンがタブーとなっているためです。(ボリウッド映画でもキスシーンは全く出てきません。) 『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』はオーストラリア・アメリカ・イギリスの合作映画ですが、半数近くのシーンがインドで撮影され、またインド人出演者やインド人スタッフも多かったことから、この古くからの掟(おきて)に従ったようです。
グーグル・アースを使い始めてから故郷を特定するまでに、どのくらいの期間が必要だったのか?
なんと6年間です。(ソース:60 minutes)こちらがガネーシャ・タライの地図です。
実際の再会は映画と同じ?再会後の実母との関係は?
2012年の2月、「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」で描かれていた様に、1人でガネーシャ・タライに着いたサルーは、自分の生まれた家を見つけますが、そこに母親は住んでいませんでした。 ここから先は「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」とは若干異なります。 あたりを15分ほど歩き回っていたサルーは、屋外に立っている3人の女性を見かけ近づいて行ったそうです。3人のうちの真ん中の女性が、母親のカムラさんだったのですが、サルーは直感的にそれが分かったと語っています。その後は「LION/ライオン 〜25年目のただいま〜」と同様、母親の知らせを受けた妹のシェキーラさんや親戚が、サルーに会うために駆けつけてくれました。 なお、再会を果たしたサルーと実母のカムラさんですが、オーストラリアのブライアリー家では誰もヒンドゥー語をしゃべれないこともあり、オーストラリアへの移住は断念したそうです。そのかわり、サルーは毎月100ドルほどのお金をインドの家族に送金し、年に2回は故郷に帰っているそうです。(ソース:Saroo Brierley: Homeward Bound グーグルPR動画)
主人公の兄グドゥはいつ、どうして亡くなったのか?
サルーが行方不明になった時、周囲の人たちは兄弟2人が一緒にいると思っていました。なぜなら、家に帰らなかったのはサルーだけではなかったからです。 2人が消息を絶ってから約1か月後、グドゥの遺体が鉄道の線路近くで見つかります。グドゥはサルーが待つ駅のホームに帰ろうとしていた同じ日に、何らかの理由で列車から転落して亡くなったとみられています。 なぜグドゥが列車から転落したのか、その原因は今もわかっていません。なお、グドゥの写真は一枚も残っていないそうです。(ソース:60 minutes)
まとめ
いかがでしたでしょうか?もしこの世に、グーグル・アースというツールが無かったとしたら、サルーはインドの家族を探し出せたでしょうか? 個人的な意見ですが、私は探し出していたと思います。なぜなら、サルーには強い目的意識と家族愛があったからです。ただ、サルーが元気なカムラさんと再会できたのは、グーグルアースのおかげだったのかもしれません。 最近は当たり前のように使っていますが、本当に偉大なツールだと思います。