ハリウッドのアジア系俳優差別!?「ホワイト・ウォッシング」の過去と現在

アメリカの映画業界には「ホワイト・ウォッシング」と呼ばれる一種の「商慣行」があります。これは、マイノリティーの役を、白人俳優が演じることを指す言葉で、しばしば人種差別的行為として批判の対象となってきました。最近の例では、2017年春公開予定の「Ghost in the Shell(攻殻機動隊)」がアジア系俳優を差別するホワイト・ウオッシング映画としてやり玉にあげられています。

今回はこのホワイト・ウオッシングの実態について掘り下げてみたいと思います。

スカーレット・ヨハンソンが日本人?

「Ghost in the Shell」の原作漫画「攻殻機動隊」は近未来の日本を舞台にしたSF作品で、アニメ化をきっかけに欧米でもカルト的な人気を集めてきました。ハリウッドの映画関係者の中にもファンが多く、「アバター」のジェームス・キャメロン監督や「マトリックス」の監督・ウォシャウスキー兄弟などが熱心な支持者として知られています。

物語の主人公は脳と脊髄の一部を除きサイボーグ化した女性諜報員で、国籍は日本人という設定なのですが、これを人気女優のスカーレット・ヨハンソンが演じることになったことで論争が起きています。原作の漫画やアニメのファンには思い入れが強い人も多く、白人が日本人の主人公を演じると聞いただけで全否定してしまう人も少なくないようです。

「アジア系から主役の座を奪うな」

ハリウッドのアジア系映画関係者からも不満を表明する人たちが現れたのですが、彼らの主張に共通するのは「ただでさえアジア系が主役となるような大手映画会社の作品が無いというのに、せっかくのチャンスを奪うな」というものです。

確かに大手映画会社のメジャー作品でアジア人が主役を演じたものは、ジャッキー・チェンが主演した「タキシード(2002)」ぐらいしか思い出せません。ただ、その理由は「現時点でアジア系の大物スターがジャッキー・チェンだけだから」と説明できるのではないでしょうか。

(追記:アジア人の主演したメジャー作品と言えば、チャン・ツィイーが主演した「SAYURI(2005)」もありましたね)

他にもある最近のホワイト・ウオッシュ疑惑

ちなみに最近の映画でホワイト・ウォッシング批判の洗礼をうけた映画には次のようなものがあります。

「アルゴ(2014)」

イラン米国大使館人質事件を元にした政治スリラーです。映画の主人公となるCIA職員はヒスパニック系でしたが、白人のベン・アフレックが演じました。なお、人質となった女性職員の一人は日系人だったのですが、こちらも白人に置き換えられています。

「エクソダス:神と王(2014)」

旧約聖書の物語なのに出演者が白人ばかりだと批判されました。実は同じく旧約聖書を元にした「ノア 約束の舟(2014)」も同じように批判されています。日本人の感覚だとピンと来ないかもしれませんが、「エクソダス」については、ヘブライ人とエジプト人の役を白人が、「ノア」については人類の先祖であるはずのノアや家族、それどころか出演者全員が白人だった、というのが批判の主な理由です。

ホワイト・ウオッシングの歴史

このように繰り返し批判されてきたにもかかわらず、ハリウッドでホワイト・ウオッシングが無くならないのはなぜなのでしょうか?その答えを探るために、ここでホワイト・ウオッシングの歴史を簡単に振り返ってみましょう。

映画産業の誕生と同時に始まったとされるホワイト・ウォッシングの歴史は古く、黒人を含めマイノリティーの俳優の数が少なかったこともあり、製作上の解決策として白人がメイクアップして自分と異なる人種の役を演じることがあったようです。その際、役をそれらしく見せるために、それぞれの人種のステレオタイプを強調するような演技が行われることも珍しくなく、それが次第に批判の対象となっていったようです。

日本人主演が見送られた本当の理由

現在は、そうした人種差別的メイキャップ型ホワイト・ウオッシング”ほぼ”なくなったものの、もうひとつのホワイト・ウオッシング、別名ブラインド・キャスティングと呼ばれる慣習は今でも続いています。役柄の人種設定とは関係なく、白人俳優を配役することを指しているのですが、その理由はただ一つ。ビジネスのためです。

「Ghost in the Shell」の製作が発表された当初は、日本人諜報員役を日本人女優・菊池凛子が演じるのではないかという噂もありました。しかし、最終的には知名度がいまひとつと言える菊池凛子の起用は見送られ、代わりにもっと集客力のあるスター女優でアクションもこなせるスカーレット・ヨハンソンに白羽の矢が立ったとされています。

「エクソダス:神と王」を監督した巨匠リドリー・スコットも、ヘブライ人やエジプト人俳優の代わりに白人スターを選んだ理由として「製作費を回収するためにはそれしか方法がなかった」とコメントしています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?批判にさらされてもハリウッドがホワイト・ウオッシングをやめないのは、そこに人種差別的な意図がなく、単純にビジネス上の理由によるものだから、と考えてよさそうです。第二のブルース・リーやジャッキー・チェンさえ現れれば、ハリウッドの大手スタジオも喜んで主役を任せるのではないでしょうか。


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