【CNN・ファリード・ザカリアが語るドナルド・トランプ像】日本が警戒すべきドナルド・トランプの本質とは?

「今のアメリカのジャーナリストで誰が最も信頼できるか?」と聞かれたら、私は迷わずCNNのファリード・ザカリアの名前をあげます。今回はファリード・ザカリアの経歴を紹介しながら、彼が浮き彫りにしたドナルド・トランプ像をとりあげてみたいと思います。

ファリード・ザカリアとは?

ファリード・ザカリアは、1964年1月20日インド・ムンバイに生まれました。父親はイスラム教徒で、ガンディーやネルーが率いてきたインド国民会議に所属する政治家、母親はインドの全国紙『タイム・オフ・インディア』の編集者でした。インドの高校を卒業後、米国の名門・イェール大学に入学。卒業後ハーバード大学大学院に進み、『文明の衝突』『第三の波』で有名な政治学者サミュエル・P・ハンティントンに師事、アメリカの外交政策を研究して博士号を取得しました。

Fareed Zakaria

その後は『フォーリン・アフェアーズ』編集長、『ニューズウィーク』国際版編集長、『タイム』のコラムニストを経て、現在は『ニューヨーク・タイムス』『ウォールストリート・ジャーナル』等に寄稿しながら『ワシントン・ポスト』のコラムニストと雑誌『アトランティック』の共同編集者を務めています。

テレビでは、ABCのニュース番組解説者、公共放送PBSでニュースアンカーを務めた後、2008年から現在までCNNの報道番組『ファリード・ザカリアGPS』でニュースアンカーを務めています。彼の番組は、日本でも、スカパーのCNNで毎週日曜日に放送されているほか、月曜日には同じ内容がポッドキャストで配信されています。(音声のみなら無料です。)

私は、彼の移民としてのバック・グランドと政治学者としての視点という二つの要素が、ジャーナリストとしての彼の信頼性を高めていると考えています。

政治的ポジションとパーソナリティ

ファリード・ザカリアは、自らの政治的な立場は「中道左派」だと公言しています。現在のアメリカのニュース・メディアでは数少ない、比較的バランスが取れたジャーナリストの一人と言えるでしょう。

現在のアメリカの政治システムが、母国インドを含む世界各国の事情と比較しいかに優れているか、あるいは恵まれているかについて、できるだけわかり易く視聴者に伝えようとする時の彼の姿勢は、国際政治報道を通してアメリカ社会に貢献したいというインド移民としての彼の個人的な思いを感じます。

CNNの彼の番組が8年も続いているのは、そうした彼の謙虚さ、誠実さが視聴者に受け入れられているからかもしれません。

ファリード・ザカリアのドナルド・トランプ観

そのファリード・ザカリアは、投票日直前の彼の番組でドナルド・トランプに対する自らの評価を明らかにしました。

彼のコメントを要約すると以下のようなものになると思います。

私自身は中道左派だが、レーガン大統領に敬意を抱いてきたし、最近の大統領候補だったマケインやロムニーも評価してきた。ただ、ドナルド・トランプは彼らとは異なる。

それは、彼が不愉快で、不潔で、下品だからでも、ビジネス取引で詐欺師まがいな行いをしたせいでもない。彼が今までの共和党の指導者たちと異なっているのは彼の信条だ。それはトランプの今日の言動ではなく、過去の言動に表れている。

(参照: CNN Transcripts

Donald Trump

ドナルド・トランプの思想・信条には、大統領候補として大きな問題点があると指摘するのは、ファリード・ザカリアが初めてではありませんが、その根拠として、最新の問題発言よりもむしろ過去の発言に注目すべきだというのが彼の主張です。

彼はトランプの人種差別意識を指摘し、それを裏付ける具体例として以下のような過去の事例を紹介しています。

  • 不動産開発業時代の初期に、正当な理由なしに黒人の賃貸契約を拒否し司法省に訴追された。
  • ニューヨークのセントラルパークで残虐な強姦事件が発生した際、ニューヨーク州では廃止された死刑復活を求める全面意見広告を新聞に掲載。後にDNA鑑定で13年も収監された容疑者の黒人少年たちの無罪が判明し4,100万ドルの賠償金が支払われたが、トランプは自分の過去の行為を正当化した。
  • 元従業員の証言によると、自社の会計部門に黒人がいることを知ったトランプは、『俺の金を数えていいのはヤマカ(ユダヤ教徒がかぶる小さな帽子)を毎日かぶった背の低い連中だけだ』と発言した。
  • 1980年代、日本が世界を乗っ取るつもりだと信じたトランプはそれを阻止するためには『関税と貿易戦争をしかけるしかない』と発言した。
  • 第二次大戦中の日系人強制収容について否定的な立場をとらなかった。

(参照: CNN Transcripts

これ以外にも、中国やメキシコに対する敵視、女性蔑視発言やイスラム教徒の入国禁止措置などを挙げていますが、日本人として気になるのは、ファリード・ザカリアがトランプの日本に対する発言の根底に人種差別的な思想があると指摘している点です。

まとめ

選挙戦の終盤に11年前に録音されたトランプの猥褻発言が問題となった際には、『男同士のたわいもないロッカールーム・トーク』だとして、批判をかわそうとしたトランプですが、それ以外の過去、すなわちファリード・ザカリアが指摘しているような過去の不適切な言動について、ひとつひとつ弁解することはもはやないでしょう。

だとすれば、アメリカを代表するジャーナリストで国際政治学者でもある(そしておそらく親日家の)ファリード・ザカリアが、トランプの一連の言動は、単なる思いつきや悪気のない不注意な発言では片づけられない根深さがあると指摘していることに、さらに、トランプが人種差別的な思考の持ち主だとする根拠として、日本人に関係する二つの事例を取り上げていることに、日本政府やマスコミは注目すべきだと思います。

(追記)ファリード・ザカリアは九州市で起きた道路陥没事故の復旧の速さを好意的に取り上げた後、同じ日に行われた安倍トランプ会談に触れ、トランプは日本の首相に効果的な道路工事についての教えを乞うべきだとコメントしていました。

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