ドナルド・トランプが共和党の大統領候補に指名された2016年6月あたりからトランプをからかい続けてきたアメリカ・NBCテレビの老舗お笑い番組『サタデー・ナイト・ライブ』は、今やトランプ大統領が最も嫌いなテレビ番組のひとつと言って間違いないでしょう。
その『サタデー・ナイト・ライブ』の脚本家が停職になりました。ついにトランプの圧力がかかったのか!?と思いきや、どうやら別の理由があったようです。
『サタデー・ナイト・ライブ』の輝かしい歴史
トランプ大統領の話題の前に『サタデー・ナイト・ライブ』の輝かしい歴史に触れておきたいと思います。
『サタデー・ナイト・ライブ』(英語: Saturday Night Live, SNL)は、アメリカNBCで、1975年10月11日より毎週土曜日の23時30分から25時00分(ET、JST:日曜13時30分 – 15時00分、夏時間は1時間繰り上げ)に生放送されている、深夜90分の公開コメディバラエティ番組である。2016年秋より第42シーズンが放映されている。(引用元:ウィキペディア)
40年以上続く伝説的お笑い番組の歴代出演者には、お馴染みのハリウッド・スターが目白押しです。『ブルース・ブラザース』のジョン・ヴェルーシとダン・アイクロイド、『ロスト・イン・トランスレーション』のビル・マーレイ、準レギュラー扱いのアレック・ボールドウィン、スティーブ・マーティンなどが知られています。
番組の司会は、俳優や歌手のほかに政治家を含むセレブが担当するのですが、2015年の7月にはドナルド・トランプが担当しました。(冒頭のビデオ参照)
大統領選挙期間中は一貫して反トランプ
『サタデー・ナイト・ライブ』が日本のお笑い番組と大きく異なる点のひとつが、政治ネタです。2016年の大統領選挙では一貫してドナルド・トランプをからかい続けました。
俳優のアレック・ボールドウィンが演じたトランプのパロディは、ダイジェスト版がほぼ毎週のようにCNNなどのニュース・メディアで取り上げられていました。
このコメディ番組と報道番組のツープラトン攻撃にトランプの怒りが爆発。『サタデー・ナイト・ライブ』を何度もツイッターで攻撃したのですが、アレック・ボールドウィンは「納税証明書を出せば止めてやる」と切り返し、攻撃の手を緩める気配は全くありませんでした。
Release your tax returns and I’ll stop.
Ha— ABFoundation (@ABFalecbaldwin) 2016年12月4日
また、ロシアがトランプ大統領の弱みを握っているのではないか?という疑惑がCNNで報じられた後は、ベック・ベネットがプーチン大統領のものまねで追い打ちをかけ続けています。
アメリカ人には、なぜかいつも上半身裸のプーチンのイメージがかなり浸透したのではないでしょうか?
番組外でのトランプ攻撃があだに・・・
ところが、絶好調だった『サタデー・ナイト・ライブ』の行く手には思わぬ落とし穴が待ち受けていました。脚本家の一人ケイティ・リッチがトランプの10歳の息子バロンをからかって次のようにツイート、そのあまりの悪質さからあっという間に炎上したのです。
Will SNL fire @katiemaryrich? Doubtful. A tweet lasts forever. pic.twitter.com/Ri2mVRW2rX
— Lauren Luxenburg (@LaurenC_Lux) 2017年1月20日
日本語に訳すと「バロンはアメリカ初のホームスクール・シューターになるだろう」という意味になります。直訳しただけではピンときませんが、これはかなり質の悪い冗談です。
アメリカではスクールシューティング、つまり学校内で発生する銃撃事件が度々起きていますが、この脚本家は、トランプの息子バロンを”学校内で銃撃事件を犯しそうな子供だ”とからかっているのです。
大統領の子供なので「在宅教育」を受けるだろうから、「ホームスクール」・シューターになるだろという「オチ」があるのですが、大統領の子供という理由だけで10歳の子供を危険人物扱いするなど正気の沙汰とは思えません。
ツイートの翌日までには、この脚本家をクビにすべきだという人たちからのオンライン署名が79000人分集まるなど非難が高まっていましたが、1月23日にNBCは「言い訳できないことをした」として謝罪するとともに、脚本家の停職を発表しました。(参照:The Washington Post)
まとめ
バロンについてはこの件以外でも女優ロージー・オドネルが「自閉症ではないか」と発言、後に謝罪して撤回しています。また、1月22日に行われた抗議集会ではマドンナが「ホワイトハウスを爆破したい」と発言するなど、いくらトランプ憎しとは言え、常軌を逸した発言の数々には、さすがのリベラル陣営も眉をひそめているようです。
今回の一件が『サタデー・ナイト・ライブ』の番組制作に影響を及ぼすとしたら、脚本家の犯した過ちの代償は計り知れない程大きなものになりそうです。