トランプの「昨日、スウェーデンで」発言。結局のところスウェーデンは安全なのか？

トランプ大統領が２月１８日に訪れた遊説先のフロリダ州で演説した際に、移民政策に関する問題が「昨日」発生したと紹介されたスウェーデン。幸い「昨日」は何もなかったものの、これまで移民を積極的に受け入れてきたスウェーデンの治安状況に世界中の注目が集まることになってしまいました。

さて、結論としてスウェーデンは安全な国なのでしょうか？日本ではあまり報道されていませんが、アメリカのFOXニュースとスウェーデンの間でこの後交わされた情報のやり取りには不可解な展開が見られたのです。

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トランプが見ていたのはこの番組だ！

トランプ大統領が見た番組ですが、お気に入りのFOXニュースで放送されていた『タッカー・カールソン・トゥナイト』です。

番組の中で、ドキュメンタリー映画監督のアミ・ホロウィッツが製作したスウェーデンの移民政策に関するキュメンタリーの一部を紹介しました。ポイントをまとめると以下の通りになると思います。

この番組を見たトランプが翌日にあの発言をするに至ったというわけです。

FOXニュースの番組を見たトランプ大統領の発言を受け、スウェーデンの元首相はツイッターで次のようにのコメントし、問題の存在を否定しました。

Sweden? Terror attack? What has he been smoking? Questions abound. https://t.co/XWgw8Fz7tj

— Carl Bildt (@carlbildt) 2017年2月19日

また、FOXニュースの番組でも紹介された２人のスウェーデン人警官は「コメントは誘導されたものだ」「あの映画監督は頭がおかしい」と発言。それをスウェーデンの新聞各紙が報じトランプの発言のもととなったFOXニュースの報道内容はほぼ完全に否定されたのです。

こうして、スウェーデン政府が否定した移民による犯罪ですが、スウェーデン国民の中にはそれが事実であると証言する人たちが現れます。なかでも最も注目を集めたのは、スウェーデンの現職警官がトランプ発言の２か月前に、自分のフェイスブックに投稿した記事でした。

オリジナルの記事は「人権侵害」で訴追されそうになった本人がすでに取り下げていますが、全文がネット上で拡散しており、欧米の保守系ネットメディアがこがぞって取り上げるようになりました。

記事の内容は、移民による犯罪の種類、容疑者の国籍（ほとんど中東の国々）について書かれたもので、書き出しは次のように始まります。

俺はもうウンザリだ。これから書こうとすることは政治的に正しくないことだが、知ったことか。

そら来た;今週は月曜日から金曜日までこんな対応だ。強姦、強姦、強盗、傷害、強姦障害・・・（以下、省略）（翻訳引用元：デイリー・テレグラフ）

こうした情報に加え、スウェーデンの首都ストックホルムの図書館が移民政策に異論を唱えたクルド人経済学者の著作物の所蔵を拒否していた事が明らかになるなど、移民政策を継続するためにスウェーデン政府が、情報の隠ぺいをしているのではないかとの見方が広まります。

FOXニュースの『タッカー・カールソン・トゥナイト』では再びこの問題を取り上げ、スタジオにスウェーデンの全国紙Expressenの特派員と在スウェーデン・前アメリカ大使をスタジオに招き、事実関係の確認を試みます。その内容は以下のようなものでした。

この後で、映画監督アミ・ホロウィッツが番組に再度出演し、タッカーは映像の信ぴょう性、とりわけ証言を覆した２人の警官についてホロウィッツに聞いていますが、彼は映像の内容に対する自信を口にしたうえで、警官達に圧力がかかっている可能性について言及しています。

２月２２日にはストックホルム近郊の移民居住地域で小規模ながら暴動が発生しています。CNNに出演したロバート・ライシュ元労働省長官が「トランプ大統領の発言が影響を与えたのではないか」と発言したのを見ましたが、この件をまともに扱ったアメリカの主要ニュースメディアはほとんどありませんでした。

「根拠のない情報に基づいて軽率な発言をしたトランプ大統領」というストーリーが崩れてしまった為なのでしょうか。このあたりは、アメリカの主要メディアの報道姿勢に疑問を感じます。FOXニュースももう少し食らいついて現地取材ぐらいしてほしいところです。

いずれにしても、スウェーデン政府が発表したようにトランプ発言の根拠が根も葉もない作り話であることを祈るばかりです。「警察官も立ち入れないような不法地帯」が本当に存在するとしたら、シリア難民に対応するための移民政策に大きな影響を与えることは避けられないと思います。