『フューリー』戦場に置かれた人間の心理状態を追体験するための映画(映画レヴュー)

『フューリー』は戦車マニアのための映画でも、ブラピ・ファンのための映画でも、説教じみた反戦映画でもありません。私たちに命の使い道を問いかける映画です。

『フューリー』2014・アメリカ (監督・脚本)デヴィッド・エアー(撮影)ローマン・ヴァシャノフ(編集)ドディ・ドーン(音楽)スティーヴン・プライス(キャスト)ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル、ジェイソン・アイザックス、スコット・イーストウッド

あらすじ

1945年4月、戦車“フューリー”を駆るウォーダディー(ブラッド・ピット)のチームに、戦闘経験の一切ない新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配置された。新人のノーマンは、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにしていく。
やがて行く先々に隠れ潜むドイツ軍の奇襲を切り抜け進軍する“フューリー”の乗員たちは、世界最強の独・ティーガー戦車との死闘、さらには敵の精鋭部隊300人をたった5人で迎え撃つという、絶望的なミッションに身を投じていくのだった……。 (引用元:公式サイト

主な見どころ

戦車という密閉された空間の中で、命の保証がないまま共同生活を送る5人の男たちの物語です。独りでは生き残れない環境で過ごすうちに、彼らはいつしか他人のために自分の命を差し出すようになります。

戦場のリアリティ

監督のデヴィッド・エアーは、戦場という環境のリアリティを追及するために、これまでの映像作家が描写することを避けてきた残酷なシーンを正確に描いています。これは『プライベート・ライアン』や『ハクソー・リッジ』等と共通するアプローチと言えるでしょう。

そうして観客は、命のはかなさを嫌というほど思い知らされます。グロテスクなシーンも含まれるので、そうした映像にどうしても耐えられない方は注意が必要です。

Fury

ローガン・ラーマンの好演

観客が戦場を追体験する際のリアリティは、新兵役を演じたローガン・ラーマンの演技に左右されたはずですが、彼はその責任を立派に果たしたと思います。『プラトゥーン』や『プライベート・ライアン』等でも演じ尽くされてきた難しい役どころですが、彼の自然な演技は賞賛に値すると思います。

Logan Lerman

まるで「陸の潜水艦」のような戦車の閉そく感

戦車が登場する映画はこれまでにもありましたが、ここまで細部を描いた作品は記憶にありません。ブラッド・ピットが演じた戦車長を中心に狭い車内で乗員達がチームワークを発揮するシーンは、ドイツ映画の傑作『Uボート』を彷彿とさせます。乗員の息遣い、空間の圧迫感、閉そく感が非常にリアルに再現されていました。

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今回の酔い加減査定

(最高酔える度5~最低酔えない度1)

常に生命の危険にさらされる環境で生きなければならないとしたら、また、その環境には運命を共有する仲間がいたとしたら、人間の精神と肉体にはどのような変化が生じるのでしょうか?『フューリー』という映画を見れば、それを疑似体験することができます。

監督のデヴィッド・エアーは生命のもろさを思い知らされた観客に、押しつけがましいことは何ひとつ口にしません。彼は私たちを70年以上前のドイツに連れ出し、当時の兵士達の経験を私たちにできるだけリアルに追体験させることに集中しています。

『フューリー』は他人に自分の命を預け、同時に他人から彼らの命を預かった男たちが鋼鉄の家の中で繰り広げる忘れがたいホームドラマです。

かなり長時間に渡り緊張を強いられるので、精神的にも肉体的にも疲労感を覚える映画です。体調が優れない時は見るべきでないかもしれません。

配給会社の宣伝手法について

映画とは直接関係ありませんが、日本の配給会社の宣伝手法について苦言を呈しておきたいと思います。

この記事を書くために公式サイトにアクセスしましたが、3年前に『フューリー』を見る気を失わせた「リアルな戦争映画」「本物のティガー戦車」をマニア向けに強調しておきながら、他方で「戦争反対を訴える」という錯乱した宣伝手法を再び目にすることになりました。こういう偽善的でセンスのない宣伝は映画の価値を下げてしまうと思います。

豆知識

共にナチス・ドイツと闘うアメリカ人兵士を演じながら『イングロリアス・バスターズ』ではドイツ語がしゃべれない役、『フューリー』ではドイツ語が堪能な役を演じたブラット・ピットですが、実生活でもドイツに縁があるようです。

ドイツ系でドイツに何度も旅行しているブラット・ピットはインタヴューで「ドイツ語の音楽的なところが好きだ」とコメントしたことがあります。また2015年にはアメリカの在米ドイツ人協会からKeeper of German Language(ドイツ語の守り神」に選ばれています。

Brad Pitt is of German ancestry, speaks the language and is a regular to the country. According to him, the German…

Posted by German Consulate General in Atlanta on Friday, December 19, 2014


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