3月2日のウォールストリートジャーナルは、アメリカ政府が北朝鮮に対する軍事的なオプションについて検討していると報じました。その4日後の3月6日には北朝鮮が日本海に向けて大陸間弾道弾の発射実験を行うなど、ここにきてにわかに緊張状態がエスカレートしつつあるようです。
ウォーストリートジャーナルの報道
アメリカのニュースメディアの一部がとりあげたウォールストリートジャーナルの報道は主に以下の内容でした。
- 北朝鮮の核の脅威に対してホワイトハウスは軍事力の使用を検討し始めた。
- ホワイトハウスは北朝鮮の核開発を遅らせることを目的として、現北朝鮮政権体制の変更と合わせて軍事攻撃をオプションとして検討している。
- 安倍首相との会談でも全てのオプションが検討されていることが説明されたが、日本政府からは軍事攻撃のシナリオに対する懸念が表明された。
内容的にはごく当たり前のことで、あわてて記事にする必要は無かったと思います。北朝鮮をけん制するために意図的に報道させたのでしょうか。
核技術の進歩と政権の異常さを強調
アメリカのニュースメディアの北朝鮮報道ですが、金正男の暗殺に加え、政権幹部5名を対空砲で処刑したことが北朝鮮の異常さを物語るニュースとして比較的多く報道されました。
また、金正恩が行った核実験についてまとめた下のデータでも明らかなよう、近年になって核実験の動きがかなり活発化しています。
アメリカの主流ニュースメディアは、①核技術が完成に近づきつつあること、そして②何をしでかすかわからない異常な人物が政権のかじ取りをしていること。これら2点を強調して、北朝鮮に対する脅威が差し迫っていることを訴えようとしています。
- ブッシュ元大統領が一般教書演説で北朝鮮を悪の枢軸国と呼んだのが2002年。15年も放置しておけば、さすがに技術的に進歩するだろうし、アメリカ本土が射程距離に入るのも時間の問題だ。
- トランプ政権が北朝鮮の核の脅威に直面するのは違いない。
アメリカ・ニュースメディアの北朝鮮報道の優先順位
現時点で、北朝鮮報道の優先順位は決して高くありません。トランプ陣営が政権発足前にロシアと接触していた件が報道の大半を占めていましたが、ここにきてトランプがオバマ政権下でトランプ・タワーの盗聴が行われていたことを糾弾したことで、北朝鮮の話題はさらに扱いが小さくなっています。
トランプ政権がオバマ政権盗聴疑惑を持ち出したのは国民の目をロシア接触疑惑からそらすための戦略だとする見方は、主流ニュースメディアや民主党議員の常識となりつつあります。政局がさらに混迷した場合、トランプ政権が北朝鮮問題をどのように扱うのか注目されます。
まとめ
金正男暗殺、幹部5名の処刑に加え、中国が北朝鮮からの石炭輸入を減らす動きを見せていることから、アメリカの識者の間では金正恩体制が危機的な状況にあるのではないか、との見方もあるようです。