【トランプ・ウオッチ】ロシアが握ったトランプの弱みとは?記者会見が笑いに包まれた理由

1月11日にドナルド・トランプ次期アメリカ大統領の記者会見が行われました。日本についての発言、ロシアが握ったトランプの弱み、そしてCNNを締め出したトランプの問題行動の背景についてご紹介します。
Donald Trump Sr. at #FITN in Nashua, NH

トランプ「次期大統領」としての最初で最後の記者会見

今回の記者会見に臨んだトランプ陣営には、二つの大きな目標があったと思います。

目標①「利益相反」問題を決着させる

大統領が特定の個人や団体の利益のために権限を行使することは法律で禁じられています。企業経営者から転身した初めての大統領となるトランプには、この「利益相反」に関して厳しい目が向けられています。

それを見越したトランプは、会社の経営権を息子達に委譲したことを大々的に発表し、この問題が解決したことを印象付けたかったのでしょう。メディアの注目がロシアの秘密文書問題に集まったこともあり、今回の会見ではこの問題にうまく対処したと言えそうです。

(それにしても、山のように積み上げた書類の前で弁護士に説明させるという、まるで投資詐欺セミナーのような演出はトランプのアイデアだったのでしょうか?)

目標②就任前の成果を強調し、反対勢力を押さえ込む

自分に対する風当たりの強さを認識しているトランプとしては、できるだけ早く強みとする経済分野で成果をあげることで反対勢力をねじ伏せたかったと思います。フォードにメキシコ工場建設計画を撤回させるとうシンボリックな成果もあげることができましたし、この目標についても達成できたと言えそうです。

本件については、アメリカのニュースメディアがなかなか積極的に取り上げようとしませんが、トランプ陣営にとってはむしろ好都合でしょう。今後もツイッターで直接情報発信することを正当化できるからです。

日本に関する発言

日本に関しては2回言及されました。1回目が「中国との貿易赤字」に言及した後に「日本とメキシコも同様だ」とした部分で、2回目が「ロシア、中国、日本、メキシコも自分が大統領になることから以前よりも敬意を払うようになった」とした部分でした。

まず1回目ですが、日本のマスコミでは、日経新聞などを除き、これを日本に対する批判として報道していましたが、トランプはビジネスマンらしく問題解決の為にターゲットを明確にしただけだと思います。ビジネスマンの感覚で下のグラフを見たら、日本に言及しないほうがむしろ不自然でしょう。(ただトランプがドイツに言及しない点については追及しても良いかもしれません。)

2回目の発言については、トランプが自らの成果を強調した際に例として名前が挙がったに過ぎないと思います。トランプがソフトバンクの孫社長と面会した後「マサ(孫社長)は、私が大統領にならなければ投資しなかった、と言っていた」とツイートしていましたが、それは2番目の発言と同様「自分が大統領になって他国がアメリカにより敬意(関心)を払うようになった結果生まれた成果だ」と、解釈することもできます。

確かに、ロシアと中国という二大悪役国家といっしょにされると同盟国の国民としては嫌な気分にはなりますが今の段階ではさほど気にする必要はないと思います。

日本のマスコミも「あーあ!指摘されちゃった!どうしよ、どうしよ」と、うろたえたり危機感をあおるだけでなく、プロとしてもう少し踏み込んで報道してもらいたいものです。

結果的にまたしてもトランプを助けたCNN

一方、トランプがロシアに個人的な情報に関する弱みを握られている可能性があることを、大統領就任式10日前というタイミングで、明らかに意図を持って報道したCNNでしたが、利益相反問題など他にもっと追及すべき問題があるなかで全くの逆効果だったと思います。

誤解のないように申し上げておきますが、私はトランプを支持していませんし、人間的には彼を嫌悪しています。私がCNNに批判的にならざるを得ないのは、トランプを擁護するためでなく最近のCNNの報道姿勢に疑問を感じているからに他なりません。(なお、アメリカのケーブルニュース局の場合、CNNも含めて番組によって報道姿勢が異なります。)

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ジャーナリズムの鉄則を破ったCNNの主張とは?

今回CNNがブレイキング・ニュース、つまり緊急速報扱いで報道したのが「『アメリカの大統領選挙に影響を与えるために、ロシアがトランプのロシア国内における行いと金融取引に関する不名誉な情報(つまり弱み)を握っている疑いがある』ことをアメリカ政府の情報機関のトップがオバマ大統領とトランプ次期大統領に直接報告した」という内容です。

これ自体は事実なのですが、日本では報道していない重要なポイントがあります。それはこの事実を把握していたのはCNNだけでなく、ほぼ全ての主要報道機関だったという事です。CNNを含め各社とも昨年の秋ごろまでには情報をつかんでいたものの、情報源を特定できなかった、つまり裏が取れていない情報だったため報道を控えていたのです。それではなぜ今回CNNだけが本件を報道したのでしょうか?

CNNの主張を要約すると「国家の安全に関わる情報だから」ということになります。証拠がない場合は報道しないというジャーナリズムの掟は、国家的危機に直面した際には必ずしも優先されないということになります。この主張には右派はもちろん左派のニュース・メディアからも批判の声が上がっています。

Anderson Cooper

CNNが公表を控えた「内容」がネットで拡散

こうした批判を受けたCNNは「情報の内容には一切触れていない」と主張しました。ところがCNNの緊急報道の後に、ネット・メディアのBuzzFeedによって「内容」の全文がネット上に公開されてしまったことで事態があらぬ方向に動き出したのです。

CNNは内容を公開したのはBuzz Feedであって自分たちの責任ではないと主張しますが、裏が取れていない情報が拡散されるきっかけを作ったことは間違いないでしょう。

日本のマスコミは、自分の意に沿わない報道をしたCNNの記者の質問をさえぎるトランプの様子だけを報道しています。確かにトランプの態度には問題がありますが、CNNの報道姿勢が「議論を呼んでいる」こともきちんと報道すべきだと思います。

全世界に公開された「秘密文書」の内容とは?

この「秘密文書」ですがBuzz FeedのUS版に続いて日本版にもアップされています。(英文です。)その中にはトランプの会社の弁護士が昨年の8月にプラハでロシアの担当者と接触したと書かれているのですが、弁護士本人がパスポートを持参してFox Newsに出演し「プラハには生まれてこの方一度も行ったことがない」と証言しています。(CNNはこれを受けて、報告書の人物が、同性同名の別人であった可能性に触れいます。)

Buzz Feed logo

なお、トランプがロシアに握られていた弱みですが、報告書には以下のように記述されています。(お食事中の方は後でお読みください。)

「オバマ大統領夫妻が嫌いなトランプは、自分がモスクワを訪問した際、オバマ夫妻が宿泊したリッツカールトンのスイートルームにあえて自分も宿泊し、売春婦を呼んでベッドに放尿させた」

(翻訳引用:Buzz Feed

真偽の程はともかくとして、すでに全世界の人たちがネット上で閲覧できる状態となってしまったこの「秘密文書」は、ロシアにとって何の役にも立たなくなってしまいました。

今回の記者会見でトランプはこの「秘密文書」の内容には全く触れずに「質の悪いでっち上げだ」と否定し直後に一言付け加えました。

緊張していた記者会見場を笑いで包むきっかけとなったその一言とは「そもそも私は潔癖症なんだよ。信じていいよ」というものでした。(上の動画00:36)

まとめ

アメリカの大統領就任式の直前にこんな事が起きるなんて誰が想像できたでしょうか。アメリカ国内が混乱すれば、日本に火の粉が降ってくることは避けれられないでしょう。

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